amiteeのほげほげ日記

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「坂の上の雲」

言わずと知れた、司馬遼太郎原作のNHKドラマ。原作はおとんの本棚に入っているが、わたしは未読。秋山好古・真之という、日清戦争日露戦争で多大な功績を挙げた軍人兄弟と、秋山兄弟と同郷で真之の幼なじみである正岡子規の3人を中心に、彼らと同じ時代を生きた人々のお話。主人公は秋山兄弟の弟・真之でこれを本木雅弘が演じているのだけど、どこか悲しげなモックンの瞳が、苦悩しながらも軍人として成長していくところにぴったり合っていると感じる。東郷平八郎を演じている渡哲也の貫禄もすばらしい。
このドラマの先週日曜日の回で、既に結核を得ている正岡子規が、秋山兄弟の活躍を知って焦燥する場面があった。軍人としての道を歩んでいた秋山兄弟がいずれ大きな功績を挙げていくであろうと想像できることについて、子規は、自分は不治の病にかかっていて、名を上げることも叶わず、何も残せないと妹に嘆くのである。この当時に結核を宣告されるのは、「あなたの命はもう長くない」と言われるのと同じことであったという。病気や貧困などの苦境が名文学を生むことは知られていると思うけれど、結果的に正岡子規は現代にあっても非常に有名な文学者であり、一方で秋山好古・真之という兄弟の名前は、一般人に浸透しているとは言い難い。近代日本の礎を築くために軍隊が果たした役割や、そのために頭脳と身体をフル活用した人たちが大勢いたことはある程度理解しているつもりだけれど、結局は文学の勝ち、といった様相を呈しているように思える。
「生きがいというのは、如何にして苦しみを越えていくかということにあるように思います」。これは高校時代の恩師からもらった言葉だけれど、結核のために壮絶な晩年を過ごした正岡子規も、これと似たような心境にあったのだろうかと思わずにはいられなかった。