amiteeのほげほげ日記

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石田衣良「光の国の姫」

以前、たまたま目にしたNHKのドキュメント番組「考える」。もっといいタイトルはなかったのかと突っ込まずにはいられないこの番組が、しかし意外にもとてもおもしろかったのであった。この番組はレギュラー化を目指して試験的に放送し、アンケートの結果などを受けてレギュラー化を検討するということのようで、石田衣良の回以外に、華道家假屋崎省吾と、クリエイティブディレクターの箭内道彦の回があった。放送時間はノーチェックだったにも関わらず、3回ともすべて視聴。どれもおもしろかった。
番組の流れとしては、すぐれたモノを生み出すクリエイターたちが、どのような思考を辿ってモノを生み出していくのかということを、彼らに密着することで明らかにしようというもの。したがって番組の冒頭に、彼らには課題が与えられる。どんな課題かは当日まで明かされず、しかもその締め切りは、常識で考えるよりはるかに短い。彼らが、元々入っているスケジュールと並行して課題をクリアしていくその様子が、ドキュメントだというわけだ。余談だけど、假屋崎さんが課題で花を生けた場所が、新宿三井ビルの入り口の前だった。三井ビルも西新宿も、というかあの位置から見える西新宿は、やはりとても懐かしかった。あんなところにあんなもの(假屋崎さんの花)があったら、あの頃の余裕のない自分でも、きっと立ち止まっただろうと思った。
そして今回、7月末に、この番組で石田衣良が書いた童話が出版になったのを、またしてもたまたま目にしたので、買ってきたわたし。NHKで放送された番組のDVDもついていて、なんだかお得感溢れる一冊1500円。童話の内容、つまり石田さんに与えられた課題は「自殺願望のある少女が、自殺を思いとどまる童話」で、それだけでは条件がゆるすぎるということで、彼自身が広辞苑からランダムに選んだ3つの単語(光学、草書、ガチョウ)を必ず入れることになった。すごいね。
石田さんの仕事場はとてもスタイリッシュで、自分の好きなものに囲まれて、それらを使いこなしながら仕事をしているのだな、という感じ。その辺は、彼の有名な作品「池袋ウエストゲートパーク」の主人公・マコトと似ていると思った。そして課題をクリアするのに、彼は独特なイメージマップを駆使していて、そのことはとても興味深かった、いろんな意味で。この回の締め切りは48時間後という驚異的な短さで、しかも彼はその時間にものすごい量のほかの仕事をこなしていた。それでもあんなにすてきな童話を作り上げるなんて、職業作家とは、そして石田衣良とは、すごいものである。この童話は、番組で中身が紹介されたときもすばらしいと思ったけれど、今回もう一度読んでみて、やはりすばらしいと思った。絵本なだけあって、絵の力も大きい。綺麗な彩色と、全体的なストーリーの悲しさ、そして希望のラストがとても調和していて、ぜひ紹介したい一冊であった。日頃文庫本を読むことが多いけれど、ときどきはこういう本も、悪くない。

NHKの番組紹介ページ→http://www.nhk.or.jp/tamago/program/20071225_doc.html