amiteeのほげほげ日記

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「転々」

先週の土曜日、仕事帰りにフォーラス・シネマパレで一人で鑑賞。これで、一年以内に会員カードのスタンプがいっぱいになったので、2回目の招待券をゲット。
本来は秋の公開ということで、東京の秋の景色が満載。休んでいた頃、平日の昼間に一人であちこち出かけていたときに見たいろんな景色とも重なるものがあり、離れてみると懐かしくさえ思える東京の姿を、ふたたび見た。映画では井の頭公園から霞ヶ関まで歩いたことになっているけれど、実際のロケ地はあちこちに飛んでいるらしい。だいたい、小泉今日子の住んでいる家がどこにあるのか、今ひとつわからなかったし。
藤田宜永の原作小説は未読で、おそらく映画のストーリーとは違っているのだろうと思う。映画では伏線の回収もほとんどされておらず、雰囲気を味わい東京の景色を味わうことに目的があったように思うからだ。なぜ取り立て屋が大学生を道連れにするのかとか、本当に取り立て屋は奥さんを殺したのかとか、自首するならもっと早く警察に行ったほうがいいはずではないのかとか、フェイク家族の謎とか。「歩いて目的地に行く」ことの意味も、映画ではあまりしみじみとは感じられなかったけれど、本当は何か別の根本的な理由があるのだろうと思ってしまう。終わり方も、映像だからこその終わり方で、小説ではもっと違うラストがあるのではないかと感じるものだった。それと、出勤してこない取り立て屋の妻の家へ行こうとする三人組は、わたしには余計だった。家へ行こうとすることそのものはいいのだけれど、ここは「時効警察」の要素がありすぎていて、この映画には余分なものに思えたのである。ただ、全体的にはこのおとぼけムードが、東京を気の済むまで散歩するという行動を、自然に見せていたと思う。
オダギリジョーはいつもどおりの感じで、「ゆれる」の演技にはとてもかなわなかったけれど、取り立て屋の三浦友和はなかなかよかった。変な髪形や服装、100万円を仕舞っている(たぶん)奥さんのポシェットもそうなのだけれど、何を考えているかよくわからないようでいて、実は全部計算しているんじゃないかと思わせる目線や、いわゆる風情が、とてもよかった。
東京という場所に対してのイメージ転換、下町というだけではない東京の風情や景色を見せてくれたところと、三浦友和の演技に、ほしいつつ。小説を読んでからだったら、がっかりしたかもしれない。次は小説を読んでみたいと思う。