amiteeのほげほげ日記

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「ディア・ドクター」

9月の初めだったような気がするのだけど、笑福亭鶴瓶と瑛太の映画「ディア・ドクター」を観た。
以前観ておもしろかった「ゆれる」と同じ西川美和監督作品で、明快な答えが出ないあたりはよく似ていたけれど、前回とは全く違うテーマで、今回もたいへんおもしろかった。どちらの作品も、明快な答えがないという点こそがおもしろい理由なのだけれど、それは「誰も知らない」と同じく、モヤモヤしたものが残るからこそよいということである。
物語としては、鶴瓶演じる、僻地の医者である伊野がある日失踪してしまったというところから始まり、その謎を追うという展開に(一応)なっている。けれど、伊野がある重大な嘘をついていたことは多くの観客が初めからわかっている、あるいはすぐに想像できることで、観客は失踪の謎よりもむしろ、その嘘が周囲や伊野本人にとって何をもたらしていたかという点に着目することになる。もちろん、嘘がもたらしたものと失踪の謎は無関係どころか密接に関わっているのだけど。そしてこれは僻地医療がどうのこうのなどという話ではなく、人間というそれぞれのハコの中にいったい何が入っているかというような、よくわからないものを目を凝らして見つめるような、そういう話。
圧巻はやはり、伊野と、瑛太演じる研修医・相馬がスイカを食べながら会話するシーン。伊野のほうは自分が嘘をついていることを一生懸命言っているのだけど、当然ながら相馬にはまったく理解できず、真実を知っている観客からすると一向にかみ合わない会話が繰り広げられるところだ。
こうやって胸の中に小石を入れられたような気分になる映画、けっこう好きなので、ほしはいつつ。前回の映画のエントリは実に一年前で、実際にこの一年はほとんど映画を観ていないのだけど、「おくりびと」は映画館でしっかり鑑賞した。「誰も知らない」と一緒で、あまりにもすごいと、何か書くことが恥ずかしくなり、何も書けないのだ。