amiteeのほげほげ日記

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「明日、君がいない」

この夏はわたしの観たい映画が多く、お休みの間に上映されるものはできるだけ1000円の時に観に行こうと思い、今回がその第一弾である。
ムラーリ・K・タルリという、日本人からすると不思議な名前の若い監督が作ったこの映画は、カンヌで上映されて高い評価を得たらしい。原題は「2:37」で、14時37分に登場人物の誰かが自殺する、ということだけが冒頭に明かされる。そして一気にその日の朝まで時間が戻り、朝から問題の14時37分までの、登場人物それぞれの様子を追っていくというのが、映画の作りだった。
ここまでの情報は観に行く前に仕入れてあったので、当然ながら、わたしは、誰が死ぬんだろうと思いながら映像を観ることになった。しかも、話のほとんどの舞台は狭い高校の敷地の中で、常に「誰かの視点」で物語が進行してゆく。廊下でふとすれ違った瞬間にその相手と視点が入れ替わったり、視点が変わるときに少し時間が戻ったりするので、否応なしに一瞬頭を整理し、そして整理することによって再び「この子が死ぬのか?」という疑問と共に映像を見つめることになる。合間には登場人物のインタビュー風の映像まで差し込まれていて、絶対違うのにドキュメンタリーを観ているような気分になったりもする。画面をじいっと見つめてしまう映画だった。
最終的に、自殺したのは意外な人物だったけれど、それは、女友だちの自殺を経験したという監督の気持ちがそのまま表現されたものだったのだろうと思う。自殺シーンの後に、そのことについて、例のインタビュー風映像で他の人物たちがいろいろ勝手なことを言うのだけれど、問題を抱えながら自殺しない人たちというのは、結局やっぱりこうかもしれない、と思わせられた。この子たちは生きていて、あの子は死んだ。それは監督が仕組んだ壮大な前振りがあってこその結末だけれど、こうやって監督と同じような体験をした気分にさせられるところは、心の中で唸るしかなかった。こういう映画を作る人が、やがて「誰も知らない」や「ゆれる」みたいな映画を作るようになるんだろうと思う。なんだか邦画しか挙げられないけれど、たぶんそうだと思った。
ほしはよっつ半。好き嫌いが分かれそうなので全面的に勧めることはないけれど、いつかDVDが出ることがあったら、観てみるのも悪くないと思う。